寛容非寛容(いま行くべきメンズエステ)

不思議なもので、東京で２０何年サラリーマンを続けているのに、この駅に降り立ったのは、実に初めてでした。両隣の駅は数え切れないほど訪れているのに、です。そして初めてながら、この駅周辺が急速に発展を遂げていることは、周囲の雰囲気から察することは出来ました。初めての駅に降り立ったというだけで、ちょっとした小旅行に来たような軽い興奮がありました。しかし、その軽い興奮は、このあとしばらくして消滅してしまいます。

駅からほどなくマンションに到着します。ワンルームのドアを開けると、ガタイがよく、いかつい、笑顔のぎごちない、不思議ちゃんが立っていました。

９０分で予約をしていたのですが、不思議ちゃんが、
「あと３０分足しませんか？」
「その分、鼠径部とかしっかり出来て、気持ち良いと思いますけど」とご発言。

十番での一件も頭をかすめたため、嬢の言うとおり、１２０分にして１８Ｋを支払いました。

不思議ちゃんは、まだ歴半年のアマチュアちゃんでした。どこを触られても不快なだけの出鱈目施術でした。

それより何より、コミュニケーション能力がほぼゼロ。

人の話を聞き終わらないうちに言葉を被せてきて、しかも発言内容が全て独りよがりな決めつけなのです。話も不快、施術も不快。

キワもなし。鼠径部のプレゼンはなんだったのでしょう。しかも１５分の時短でした。

さすがに頭に来て、文句を言いそうでしたが、ぐっと我慢しました。

「今日はこんな日だったのだ」

そう思って諦めました。

しかし、それ以来、ずっと考え続けています。「嬢による」とはいえ、同じ店舗で、この内容の差は何なんだろうと。あまりの落差です。（前半の「スペシャル」のことを言っているのではありません。嬢の、基本的なスキルの話です）経営側の統制が取れず、無政府状態となっているのでしょうか。それとも、「全て大吉のおみくじは売れない」理論に則って、はずれくじを潜ませてあるということなのでしょうか。

この落差がメンエスといえばそうなのでしょう。全ては客の幻想であり妄想であり、売買契約に明示された具体などは何一つないといえばないのでしょう。

これが飲食店で、１８Ｋのコースの内容、味が、日によって大きな落差があったりしたら、そのお店は淘汰されるに決まっている、なんて考えるのは、野暮に決まっています。

でも、今回の落差は、ちょっとショックでした。

「メンエス新規突入、もうやめっかな」

頭の片隅に、そんな台詞がちらついています。